デザイン思考はアイデァイを実現するツール

発想

デザイン思考について、
前回は概念やその基本的な手法について説明をしました。

手法について理解いただいたところで、
今回は具体的なデザイン思考の適用例をもとにさらにデザイン思考の使い方について
イメージを深めていただけるようご説明したいと思います。

デザイン思考は、アイデァイを実現するためのツール
(道具)ですから、使い方に慣れることで一層その力を発揮します。

頭の中のモヤモヤを明確な形にするのがデザイン思考の得意技です。

まずは、デザイン思考適用の代表格
といっても過言ではないApple社の事例からご紹介したいと思います。

Apple社では音楽再生用のポータブルプレーヤーの開発において
デザイン思考を用いた開発を行いました。

その開発手法で生み出されたのが、
世界的にも有名なヒット商品であるiPodおよびiTunesです。

これらをデザイン思考で開発するために、
Apple社ではデザインや心理学など、
様々な分野の専門家を集め開発チームを作りプロジェクトを進めました。

そのデザイン思考を用いたプロジェクトの進め方について以下に
デザイン思考のステップと合わせて紹介したいと思います。

iPodはデザイン思考で生まれた

iPod

【ステップ1:共感】

まず各分野の専門家を集めた開発チームで、
競合他社の音楽プレーヤーについて徹底的な分析を行いました。

どのような機能を持っているのか、
どのようなデザインなのか1つ1つ細かに分析を行ったのだと思われます。

さらに、ポータブル音楽プレーヤーを利用するユーザがどのように普段音楽を聞いているのか、
どのようにプレーヤーを利用しているのかを洗い出しました。

その結果、現状販売されている製品では、気に入った音楽をCDなどからPCへ取込、
そのデータをプレーヤーへインプットするという一覧の作業自体にわずらわしさや、
不便さを感じているという課題が浮き彫りとなりました。

CDからプレーヤーに落とす一連の動作等のわずらわしさを排除して、
「自分の選んだ曲をその場で、どこへでも持ち歩きたい」というようなニーズも明らかとなりました。

【ステップ2:問題定義】

そこで、ステップ1で見つけた
「ディスクから音楽をデジタルデータ化し取り込む作業を簡素化したい」
という課題をさらに細かく分析しました。

当時は音楽をデータ化し取り込むという作業はプレーヤーで音楽を聞く際に必須であり、
さらにポータブルプレーヤーに入れられる曲にもCD1~2枚程度と限りのある製品がほとんどであったという市場分析を含め
「自分の選んだ曲をどこにいてもその場で聞きたい」
という潜在的なニーズを洗い出しました。

【ステップ3:アイデア抽出】及び【ステップ4:プロトタイピング】

ステップ2で落とし込んだ「自分の選んだ曲をどこにいてもその場で聞きたい」
(現状は聞けない)というニーズや課題に対し、それを解決する方法としてApple社では
「すべての曲をポケットへ入れて持ち運ぶ」というコンセプトを生み出しました。

そしてこのコンセプトを具現化するアイデアとして、
円盤状のホイールで操作できる画面や、
音楽プレーヤーか(後のiPod)とPCを自動で同期させるシステム等をあげました。

【ステップ5:テスト】

こうして生まれたプロトタイプに対して何度も評価を行い、改善を加えました。

2001年に革新的なポータブルプレーヤーとしてiPodを市場へ発表し、
世界中を瞬く間に魅了したのです。

Appleでは初代iPodを市場へ反映した後も繰り返し、
市場からの評価とその改善に努め2003年にはいつでもどこでも音楽を購入できるiTunesの開設までこぎつけたのです。

もう一つの適用例「Wii」

wii

もう1つデザイン思考の適用事例として有名なのが、
国内メーカである任天堂の製品開発における事例です。

任天堂ではWiiを開発する際にデザイン思考を取り入れています。
デザイン思考のステップに合わせて以下に少し解説したいと思います。

【ステップ1:共感】

任天堂ではまず、社員の家庭を徹底的に観察しました。

観察を進めると、ゲーム機が家庭にある場合、
子供と親の関係はあまり良い状態とは言えないということが分かりました。

ゲーム機が家庭にあると、
子供が家族団らんの場であるリビングに滞在する時間はゲーム機がない場合と比べ短い傾向にあったのです。

【ステップ2:問題定義】

ステップ1で洗い出した

  • 「ゲーム機が親子の関係を悪化させている」
  • 「ゲーム機が子供のリビング滞在時間を短くする要因である」

という課題に対し、その根本的な原因の分析を行いました。

任天堂はゲーム等を主力製品として販売する企業であるため、
この課題に対する根本的な解決策、
潜在ニーズとして
「家族全員で楽しめるゲーム機の開発」

「家族の関係を良好なものにするゲーム機の開発」
というニーズを洗い出しました。

もちろん余談ですが、
この問題にあたったのが任天堂でなければ違うニーズや問題定義になることもしかりです。

【ステップ3:アイデア抽出】

ステップ2で洗い出した
「家族全員で楽しめるゲーム機の開発」

「家族の関係を良好なものにするゲーム機の開発」
というコンセプトに対し、それを具現化できるアイデアの抽出に努めました。

その結果
「家族の誰もが利用できる(操作できる)リモコン型コントローラー」

「リビングに設置しても邪魔にならないようなコンパクトな本体」

「家族で利用しても電力消費を抑えられる低消費電力CPU」
等のアイデアが洗い出されました。

【ステップ4:プロトタイピング】及び【ステップ5:テスト】

ステップ3で洗い出したアイデアについてプロトタイプを作成しました。

特にコントローラーのデザインについては1000回以上の改善を重ね、
ボタンの数、形状、コントローラーの重さ、操作性などを追及しました。

その結果、今までのゲーム機のイメージを覆す、
家族団らんの中核を担えるようなWiiという製品にたどり着き、
Wiiは市場に出るや否やヒット商品となりました。

いかがでしたでしょうか?
国外、国内の代表的なデザイン思考の適用例をご紹介しましたが、
デザイン思考についてより具体的なイメージを抱いていただけたでしょうか?

デザイン思考はユーザに寄り添い、
ユーザの痒い所に手が届くような製品開発をするには今回の2例を見ていただいても適していることがわかるかと思います。

とても有用な手法ではありますが、
デザイン思考を身に着けるには実践を重ねていくこと以外にないといっても過言ではありません。

デザイン思考の考え方は、
ご自身の家庭や、オフィスなど身近な課題の発見や、解消にも役立てることができます。

ぜひ一度周りを見渡して簡単な部分からデザイン思考をとりいれ、実践的に身につけられてみてください。